Purchase Contract における Force Majeure に追加すべき不可抗力事由の列挙例

(1) flood, earthquake, typhoon, tsunami(tidal wave), perils of the sea, fire, explosion, pandemic, epidemic or other act of God,
  洪水、地震、台風、津波、海固有の危険、火災、爆発、パンデミック、エピデミック又はその他の天災

(2) prohibition of exportation, embargo or other type of trade control,
  輸出禁止、出入港禁止又はその他の貿易規制

(3) governmental order, regulation or direction, or quarantine restriction,
  政府の命令、規則又は指示、若しくは検疫上の制限

(4) strike, lockout, slowdown, sabotage, or other labor dispute,
  ストライキ、ロックアウト、操短罷業、サボタージュ又はその他の労働争議

(5) war, hostilities, riot, civil commotion, mobilization, revolution or threat thereof, boycotting,
  戦争、戦闘行為、暴動、騒乱、動員、革命又はそれらの脅威、不買(売)同盟

(6) accidents or breakdown of machinery, plant, transportation or loading facilities,
  機械設備、プラント、運送又は船積み設備の事故若しくは故障

(7) shortage of petroleum products, fuel, electricity, energy sources, water, other raw materials,
  石油製品、燃料、電力、エネルギー資源、水、その他の原材料の不足

(8) substantial change of the present international monetary system or other severe economic dislocation,
  現行の国際通貨制度大幅な変更又はその他の厳しい経済変動

(9) bankruptcy or insolvency of the manufacturers or suppliers of the Goods,
  商品の製造者又は供給者の破産若しくは支払い不能


(10) Radioactive Contamination
   放射能汚染

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金銭債務の不履行についての不可抗力免責は否定される

不可抗力によっても金銭債務の不履行については免責とならないのが国際契約の原則である。日本法でも、民法第419条第3項で、債務不履行について、債務者は不可抗力をもって抗弁することができない、と規定されている。
国際契約の原則:これについては、次の一説を参照ください⇒「なお、英米法系、大陸法系の国ともに、金銭支払債務については適用がない(不可抗力を理由とする金銭支払債務の免除は認められない)点では共通している。」(引用:ベーカー&マッケンジー法律事務所「世界の主要な「不可抗力」法規と免責主張の具体的留意点:英米・大陸法、中国法、日本法を比較」https://covid19-businesspractices.com/2020/05/01/forcemajeure-01/ )

民法 (金銭債務の特則)
第四百十九条  金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

理由:金銭は、その極度の融通性・普遍性から、金銭債務の履行不能は有り得ない。金銭は万能であり、世の中のどこかには必ず存在する。特定物とは違って、代わりがいくらでも存在しる。支払いが不可能ということは有り得ない。

平成23 年3月24 日 債権法改正に関する提言 【債務不履行の責任/契約の効力/契約の解除等】に関する部分 経営法友会 代表幹事
現在、法制審議会民法(債権関係)部会において議論されている民法(債権関係)改正について、経営法友会(企業の法務担当者によって組織され、企業法務の充実・向上を目的に、企業法務に関してのセミナー・研究会や所管官庁・関係団体に対する意見具申等を行い、39 年の実績がある)において、企業実務における影響など、内容の検討を進め意見をとりまとめましたので、当会意見として公表いたします。出所サイト:http://www.keieihoyukai.jp/opinion/opinion68.pdf
■1 債務不履行による損害賠償
(7) 金銭債務の特則(民法第419 条)
@ 要件の特則:不可抗力免責について民法第419 条第3項は、金銭債務の不履行について不可抗力免責を否定しているが、例えば、債務者が大震災の被害に遭った場合等、金銭債務においても不可抗力免責を認めることが妥当な場面が存在するとの批判がある。そこで、金銭債務の不履行について不可抗力免責を否定する民法第419 条第3項を削除し、金銭債務の債務者にも債務不履行の一般則による免責の余地を認めることが望ましいという考え方があるが、どのように考えるか。
【提言】慎重な検討を要する。
【理由】金銭債務の不履行自体に対して、不可抗力免責を認め、当該不可抗力事項が消滅するまでの間の支払の停止(Suspend)を認めること自体には賛成である。しかし、当該支払の停止をしていた期間に関する債務不履行による損害賠償は債権者及び債務者間の利益調整のため、認めるべきと思料する。特に、履行を行わなかった期間に債務者に当該債務額に対する金利が発生する(予定以上の果実を得ることになる)ことと、債権者において当該支払停止期間に当該債務額に相当する金額を運用できないこと又は第三者から調達する必要が生じること等に鑑みると、損害賠償をさせないことは不当に債権者を害することになり得るため反対である。
その意味において、金銭債務の不履行に対する損害賠償請求に関する不可抗力免責の否定(民法第419 条第3項は、まさに損害賠償について定めた規定)は、国際的にも一般的な取扱いであり、これを日本のみ変える必要があるのか疑問である。免責をする必要がある場合は個別の案件ごとに債権者がその権利を行使しなければよいだけで、一般法則として不可抗力免責を認めることには慎重であるべきである。
【参考資料】・法制審議会民法(債権関係)部会資料5-25658
      ・「債権法改正の基本方針」【
3.1.1.72

対策:契約書の「不可抗力」条項において、売主に立場から、「金銭債務(monetary liabilities)については、不可抗力による免責の適用はない」、買主の立場から、「金銭債務については、不可抗力により免責される」と明示した規定を設けること。

なお、CISGでは、不可抗力による金銭債務の不履行については、特に免責されないという規定はないので、免責される。

 不可抗力に関するCISGの規定
Article 79
(1) A party is not liable for a failure to perform any of his obligations if he proves that the failure was due to an impediment beyond his control and that he could not reasonably be expected to havetaken the impediment into account at the time of the conclusion of the contract or to have avoided or overcome it or its consequences.
第七十九条【債務者の支配を越えた障害による不履行】
(1) 当事者は、自己の義務の不履行が自己の支配を超える障害によって生じたこと及び契約の締結時に当該障害を考慮することも、当該障害又はその結果を回避し、又は克服することも自己に合理的に期待することができなかったことを証明する場合には、その不履行について責任を負わない。

「英米契約法には,日本法でいう不可抗力や大陸法でいうForce Majeureの概念がないので,契約の中で何も規定していなければ,非常に限られた場合を除いて不可抗力による免責は得られません。ですから,英米法系の法律を準拠法とする場合,何らかの避けられない事情で契約上の義務を履行できない事態が生じた場合に債務不履行責任を免れるようにするためには,明確にForce Majeureの条項を設けて,予測される事態をできるだけ多く例示的に列挙しておく必要があります。」国際商取引ハンドブログより(出典サイト:http://d.hatena.ne.jp/internationallaw/20101014/1287015123 )