貿易貨物についての地震の保険

長光正明 Copyright (C) Masaaki Nagamitsu 2005/March/29

課題:貴社の輸出貨物又は輸入貨物が、日本の港にあるとき、地震の危険について、これを回避するための貨物保険による対策について考えてみよう。

(情報入手先:東京海上N 2005/Mar/29及び三井住友海上A 2005・Mar/30)

・輸出FOB保険
 1 貨物が陸上(湖川を含む)にあるときは地震の免責が約款にうたわれている(普通保険約款第5条2項)。地震特約は、上得意等の特別な事情のない限り保険会社は引き受けたがらないので、事実上、地震特約は付けられないと考えるのが妥当。
 2 貨物が海上にあるときについては、免責されるという規定はないので、国内の海上においては、付保される。

・A/R、WA、FPA
 1 旧協会貨物約款では、地震は免責されるとも、カバーされるともうたわれていない。
 2 従って、免責されるとなっていないので、陸上であれ海上であれカバーされると解される。(東京海上)
 3 A/Rでは条件如何にかかわらずカバーされる。
 4 WA、FPAでは、海上以外の陸上においても、全損の場合だけとか、分損の場合にはその条件によってカバーされたり、されなかったりする(東京海上)。
   他の見解:海固有の危険として、WA、FPAでは海上のみのカバーで、いずれも陸上ではカバーされない(三井住友海上)。
 5 WA、FPAの場合に保険会社は地震の特約を受け付けていないのでA/Rに条件を変更してしてカバーすることになる。
 6 1982年版ICCの新約款では、地震は(A)と(B)ではカバーされるとうたわれているが、(C)ではカバーされない。つまり、(B)では、陸上でもカバーされるが、(C)では海上のみのカバーとなる。

・輸出者の対策
 輸出FOB保険では、陸上にある場合、例えば神戸港のCYに貨物がある場合に地震に遭遇すると、その損害はカバーされないので、輸出者としてCIF条件にしてA/Rにしておけば、神戸港のCYで地震に遭遇しても(あるいは、輸出者の倉庫から神戸港への輸送途中に遭遇したとしても)カバーされる。なお、CIF条件を受け付けない「自国保険主義」の国があるので気を付ける。
 参考:自国保険主義の国のリスト